STORY

きらめく日差し、蝉の声。暑い夏の日。

母の声に、幼い私は慌てて長靴をはき、軽のバンに乗り込む。

バンは線路を越え、 大通りを渡って 果物畑の中を

白い入道雲が伸びる山にむかって ぐんぐん登っていく。

着いた先はブルーベリー畑。

青い空、碧い山が近く、夏でもウグイスの声がきこえる高山村・福井原にある。

真剣に実を摘む母を横目に、小さな手でカゴを握りしめ、実を食べるのに忙しい。

飽きたら、口の周りや舌を紫色にして、沢山実が入ったカゴを羨む私に

「食べてたら貯まるわけないじゃない」と母は笑っている。

虫を追ったり、探検している間に、畑の一角に出来上がるゴザの特製休憩所。

そこには手作りクッキーやサンドイッチが並んでいて、暑さにうれしい凍ったゼリーもあった。

走りまわった子どもが飛び付かないはずはなく、畑で食べるおやつは、いつでも全部おいしかった。

ひとまわり涼しい風と水、遠くには北信五岳とアルプスが見える。

風でゆれる樹々の音しかない、ゆっくりの時間。

いろんなことを教えてくたその畑は、実は、なくなった。

両親の仕事が忙しくなり、ブルーベリーを世話する時間がなくなった畑は藪になったのだ。

寂しかったけど仕方がない、と諦めていた。 

そして、あれから何年も経った2019年のある日。一本の電話が。

「高齢のため福井原のブルーベリー畑を手放そうと思っている。」

引取り手がいなければ更地にすると聞いた時、心に渦巻いたのは、余りある、幼い日の夏の思い出だった。

いまの私には、力も想いもある。大切だったあの畑の時間を繋いでいきたい。

「私が目の前の手を取らなくてどうする」と、ブルーベリー畑をはじめ今に至るのです。

Blueberry1st. 代表 植木淑恵

Blueberry1st.

「ブルーベリー第一主義」のもと 標高約700mの生命の息吹が詰まった、大地と繋がる ブルーベリーをお届けします。 信州高山村 の小さなブルーベリー畑から はじめます、はじまります。 #30代 #農業女子 #農起業 #長野 #高山村 #ブルーベリー #畑を通じて人と繋がる #日常に変化と感動を